30坪の戸建てで足場を1回組むと、費用の目安は18万〜23万円。群馬県前橋市の塗装会社・株式会社ミヤケンが公開している実勢価格です(出典: https://www.m-kensou.com/column/gaihekitosou/20230111rr/ /最終確認日2026-07-29)。外壁と屋根を別々のタイミングで塗装すると、この足場代が2回発生し、合計は36万〜46万円。同時に塗装すれば1回分で済むため、単純計算で約20万円前後の差が生まれることになります。
外壁塗装の見積もりを取り始めたら、業者から「屋根も一緒にどうですか」と提案された——この記事は、そんな築10〜15年前後の戸建て所有者の方に向けて書いています。同時塗装は本当に得なのか、30坪を目安にした費用相場、別々に塗った場合との実額比較、そして「あえて同時にしない方がよいケース」まで、実在する塗装会社の公開データをもとに整理していきます。
屋根と外壁の同時塗装が勧められる理由——足場代の仕組み
外壁塗装でも屋根塗装でも、2階建て住宅では作業用の仮設足場が欠かせません。そして足場は工事が終われば解体してしまう「消えもの」。ここに同時塗装が勧められる最大の理由があります。
足場の実勢単価は、前橋市のミヤケンの公開情報でビケ足場(くさび足場)800〜1,200円/㎡、広島県福山市・岡山県笠岡市のイマガワペイントの公開情報で仮設足場600〜900円/㎡とされています(出典: https://www.m-kensou.com/column/gaihekitosou/20230111rr/ および https://imagawa-paint.com/encyclopedia/cost/4777/ /いずれも最終確認日2026-07-29)。2社の数字を重ねると、実勢はおおむね600〜1,200円/㎡、中心帯は700〜1,100円/㎡あたりに収まると見てよいでしょう。
30坪クラスの住宅では、建物外周に手すり分の約60cmを足した長さ×高さ約7mで足場架面積を計算し、そこに平米単価を掛けます。ミヤケンの試算では30〜35坪で18万〜23万円が目安です。足場代の計算式や坪数別の早見表は足場代の相場と計算方法で詳しく解説しているので、自宅の概算を出したい方はそちらも参考にしてください。
つまり、外壁だけ塗って数年後に屋根を塗ると、約20万円の足場代をもう一度払うことになる。これが「屋根も一緒に」と提案される背景です。
【30坪目安】屋根と外壁の同時塗装の費用相場
では、同時に塗装した場合の総額はいくらぐらいなのでしょうか。外壁塗装の一括見積もりサイト「外壁塗装の窓口」が公開している30坪の相場データを軸に整理します(出典: https://gaiheki-madoguchi.com/articles/1365 /最終確認日2026-07-29)。
| 工事内容(30坪目安) | 費用相場 |
|---|---|
| 外壁塗装のみ | 60万〜90万円 |
| 屋根塗装のみ | 40万〜80万円 |
| 外壁+屋根の同時塗装 | 80万〜120万円 |
千葉県市原市の石井イノベーションサービス株式会社も、30坪の外壁塗装は約60万〜140万円が目安とし、屋根と同時に施工すれば足場代分で最大20万円の節約が可能と自社コラムで明記しています(出典: https://iis-inc.jp/column/20260206-3/ /最終確認日2026-07-29)。
幅があるのは、選ぶ塗料のグレード(シリコン・ラジカル・フッ素など)、外壁の劣化度合いによる下地補修の量、付帯部(雨樋・破風・軒天)の範囲で金額が変わるためです。相場より極端に安い・高い見積もりが出てきたら、まずこの3点の仕様を確認しましょう。
別々に塗装した場合との実額比較シミュレーション
「同時だと出費が大きいから、まず外壁だけ」と考える方は少なくありません。ただし数年ずらして屋根を塗る場合、総額がどう変わるかを先に見ておく価値があります。前出の相場データで比較してみます。
| パターン | 内訳 | 総額目安 |
|---|---|---|
| 別々に実施 | 外壁のみ60万〜90万円 + 屋根のみ40万〜80万円(足場代を各回負担) | 100万〜170万円 |
| 同時に実施 | 外壁+屋根一式(足場代は1回分) | 80万〜120万円 |
| 差額 | ほぼ足場1回分+諸経費の重複分 | 約20万〜40万円 |
差額の中身は、30坪で18万〜23万円という足場1回分に加え、現場管理費や職人の移動・段取りといった諸経費が2回分から1回分になる効果です。「外壁塗装の窓口」も同時依頼で20万〜40万円程度の節約が可能としており、市原市の石井イノベーションサービスの「最大20万円」という数字とも整合します。
もちろんこれは相場ベースの試算であり、実際の差額は建物の形状や劣化状況で変わります。ただ「足場代の二重払いを避けられる」という構造自体は、どの業者に頼んでも変わりません。
同時塗装のメリット4つ
費用以外も含め、同時塗装の利点を整理します。
1. 足場代・諸経費が1回分で済む
ここまで見たとおり、30坪で約20万円前後の差になる最大の要因です。
2. 工事の立ち会い・近隣対応が1回で終わる
着工前の近隣挨拶、在宅での色決め打ち合わせ、洗濯物を外に干せない期間——こうした生活面の負担が2回から1回になります。共働き世帯には金額以上に効く部分です。
3. 外壁と屋根のメンテナンス周期が揃う
同時に塗れば次回の塗り替え時期も揃いやすく、10年前後ごとの計画が立てやすくなります。周期がずれたままだと、そのたびに足場代がかかる状態が続きます。
4. 色の組み合わせを一度に設計できる
外壁と屋根を別々の年に塗ると、先に塗った色に後から合わせる制約が生まれます。同時なら全体の配色をゼロから設計可能。人気の組み合わせは屋根と外壁の色の組み合わせでシミュレーションできます。
同時塗装のデメリットと注意点
一方で、同時塗装にも注意点があります。
一度の出費が大きくなる。 総額では得でも、80万〜120万円をまとめて用意する必要があります。資金計画が厳しい場合は、後述する補助金などの制度活用も検討しましょう。
業者によって得意分野が違う。 外壁は得意でも屋根工事の経験が浅い業者もいます。屋根の施工実績や、屋根診断の写真報告があるかを確認してください。
「足場代無料にします」という勧誘には警戒が必要。 足場には実費が発生するため、無料をうたう場合は他の項目に上乗せされているのが実態で、訪問販売の値引きトークの常套句として消費生活センター等でも注意喚起されている手口です。値引きの理由が説明できない業者は避けるのが無難です。
同時にしない方がよい3つのケース
同時塗装は万能ではありません。次のケースでは、あえて分ける・別の工法を選ぶ判断が合理的です。
1. 屋根だけ劣化が極端に早い場合。 スレート屋根や金属屋根は紫外線と雨を直接受けるため、外壁より劣化が早く進みがちです。外壁はまだ健全なのに屋根だけ限界という場合、外壁を「まだ塗らなくていいのに塗る」のはもったいない。屋根のみ先行し、次回外壁時に屋根は点検だけ、という設計もあります。劣化サインの見分け方は塗り替え時期の見極めにまとめています。
2. 屋根が塗装できない状態まで傷んでいる場合。 スレートの割れ・反りが広範囲に及ぶと、塗装ではなくカバー工法や葺き替えが必要になります。この場合「同時塗装パック」の土俵には乗らないため、屋根工事の専門診断が先です。
3. 外壁の劣化がまだ軽微な場合。 チョーキング(白い粉)もひび割れも出ていない築浅の外壁なら、屋根に引っ張られて前倒しで塗る必要はありません。「足場がもったいないから」は同時にする理由として有力ですが、劣化していない面まで塗る理由にはならない、と覚えておきましょう。
工期の目安——同時なら10〜14日程度
大阪市の創建ペイント(株式会社創建)の解説では、戸建ての外壁塗装のみの工期は通常7〜14日程度が目安とされています(出典: https://www.k-skn.com/sokenpaint/column/1596/ /最終確認日2026-07-29)。屋根を同時に塗る場合でも、一括見積もりサイト「ヌリカエ」の解説では10〜14日程度が目安とされており(出典: https://www.nuri-kae.jp/column/deterioration/174/ /最終確認日2026-07-29)、意外に延びません。足場設置・高圧洗浄・養生・足場解体といった工程を屋根と外壁で共有できるためです。
別々に実施すると単純計算で通算3〜4週間相当になり、足場の設置・解体や近隣挨拶も2回ずつ発生します。天候による順延リスクを2回抱える点も見逃せません。
費用負担を軽くする4つの制度
80万〜120万円という金額をそのまま自己資金で払う前に、使える制度がないか確認しましょう。自治体の住宅リフォーム補助金、遮熱・断熱塗料への省エネ関連補助、リフォーム減税、そして風災など条件を満たす場合の火災保険。それぞれの対象条件と申請タイミングは費用負担を軽くする4制度で解説しています。
特に補助金は「着工前の申請」が条件のものが多く、契約後に気づいても間に合いません。見積もり段階で並行して調べておくのが鉄則です。
まとめ——見積もりは「外壁のみ」と「同時」の2パターンで取る
30坪の戸建てなら、屋根と外壁の同時塗装は80万〜120万円が相場の目安で、別々に実施した場合と比べて足場代を中心に約20万〜40万円の差が出る——これが公開データから見えた実額です。一方で、屋根だけ劣化が早い家や、屋根がすでに塗装できない状態の家では、同時が最適解とは限りません。
判断を誤らないための実践的な方法は、複数の業者に「外壁のみ」と「外壁+屋根同時」の2パターンで見積もりを出してもらうことです。同じ条件で並べれば、足場代の計上方法や屋根診断の丁寧さまで業者ごとの差が見えてきます。具体的な依頼の仕方と比較のチェックポイントは相見積もりのやり方で手順化しているので、見積もり依頼の前にひととおり確認してみてください。